備忘録

日々の所感など


正社員は一種の受託である

正社員というと、企業の正式な一員とか責任ある立場だとかいうイメージがあるかもしれないが、結局は労働の対価として給料をもらうだけの存在である。個人を法人に言い換えれば、自社サービスを持たず受託開発を行うスタートアップのようなものだ。技能を提供する対価として報酬を得るという点では、正社員は派遣社員や契約社員、アルバイトとなんら変わりはない。それを如実に表すのが、正社員が会社を辞めた時だろう。

 

会社を辞めた後、社員だった人間はこれまでの社内での貢献に対して、引き続き報酬を受け取ることができるだろうか?社員が辞めた後も、その社員が開発した製品やサービス、あるいは開拓した顧客から莫大な利益が得られている時、その労をねぎらって元社員に報酬を払い続ける会社があるだろうか?答えは当然Noである。社員は会社に所属している期間においてのみ、報酬を得ることができる。その社員が過去、どれだけ大きな貢献をしても、どれだけの資産を社内に築き上げたとしても、辞めれば社員の手元には何も残らない。

 

もちろん、会社で働くことによって自己の成長を実現できるという利点はある。責任ある立場で挑戦的な仕事を達成していくことによって、貴重な知識や経験、人脈を得られるのは確かだ。それによって転職先でさらに高給を得られるようにはなるかもしれないし、あるいは独立の足掛かりとなることもある。しかし、社内で作った製品やサービスはあくまで会社の資産であって、自分の資産とはならない。そして、実際に金を生むのは知識や経験、人脈といった抽象的なものではなく、製品やサービスといった実物的な資産なのである。

 

金を得る方法は主に2種類ある。自らの労働を対価として報酬を得るか、自らが保有する資産に金を作らせるかである。前者でもある程度の報酬を得ることは可能だが、いわゆる資産家が行なっているのは後者の方法である。自らが立ち上げた法人やその株式、あるいは保有する債券や不動産といった例がわかりやすい。自分で開発したWebサービスやアプリ等から日々利益が生まれているなら、それも資産と呼べるだろう。

 

昨今、副業という言葉がよく取りざたされるようになった。いま現在企業に雇用されている社員も、会社を辞めたあとでも金を生み続ける資産を作っておくことは損にはならないだろう。

 

 

最強の節税手段は海外に住むこと

節税と言っても住宅ローン控除や生命保険控除、ふるさと納税等いろいろあるが、最強の節税手段は海外に住むことだと思う。ここシンガポールでは住民税、贈与税、相続税はなし、所得税は収入にもよるが概ね5〜10%、株の売却益や配当に対しては非課税と、日本に比べて大幅に税金が安い。永住者であればCPF(日本でいう年金)を収める必要があるのだが、それを考慮しても収入に占める手取りの割合は日本より大きい。実際、日本にいる時より金が貯まるようになった。

 

特に株をやっている人はシンガポールに住むメリットは大きい。シンガポールのフィリップ証券などからでも日本の株は買えるので、わざわざ税率の高い日本で株を保有する理由はないだろう。実際、私は移住のタイミングで楽天証券で保持していた株を売却し、フィリップ証券で買い直した。こちらでは配当にも税金が掛からないので、資産運用にはうってつけと言える。

 

シンガポールの難点としては、コンドミニアムに住むと家賃が跳ね上がる点だろう。日本に住んでいた時の倍以上の家賃を払っているので、節税分を若干相殺されてしまっている感がある。コンドミニアムといってもプールやジム、テニスコート等がある以外はHDB(公営団地)とさほど変わらないので、それらが必要なければHDBに住むのが得策かもしれない。

シンガポールに対するイメージと実情について

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シンガポールはよくゴミ一つ落ちていない綺麗な街と言われますが、結論から言うとこれは嘘です。もちろん、他の東南アジアの国に比べれば綺麗だと思いますが、タバコの吸殻や空き缶、ペットボトルの類が普通に道端に落ちてます。実際、こちらの人は誰もシンガポールがゴミ一つ落ちてない街などとは思っていません。おそらくこのフレーズは旅行会社か何かが誇張して作った宣伝文句が、日本国内で一人歩きしたものなのでしょう。

私がシンガポールに来る前に持っていたイメージは下記の通りです。

  • 緑豊かなガーデンシティ
  • ゴミ一つ落ちていない綺麗な街
  • 規則が厳しく、ゴミを捨てたり唾を吐いたりすると即逮捕 or 罰金
  • 一人当たり所得が日本以上、金持ちばかりの国

これらはあながち嘘ではありませんが、言葉通りの事実というわけでもありません。まず緑の多さですが、これは定義の仕方によると思います。例えば日本は国土の7割が森林であり、全体的に見ればシンガポールより日本の方が緑豊かといえます。とはいえシンガポールは世界的にも稀な都市国家であり、国土全体で比較するのは適当ではなさそうです。では都市部はどうかというと、一人当たりの公園面積がシンガポールが概ね5~7㎡と言われているのに対し、東京・大阪は3 ㎡台なので、確かにシンガポールの方が都市部としての緑は多そうです。実際、シンガポールの町並みを歩いていると街路樹の多さに気づきますし、中にはCapita Greenのようにビルの外壁に木々が植えつけられた建物も見られます。

次にゴミのポイ捨てや道端での飲食の件ですが、シンガポールではこれらの違反を犯すと即逮捕&高額の罰金を科されるというイメージがあったのですが、実際そういうわけでもないようです。というのも、道端で常に誰かが見張っているわけでもないので、仮にゴミを捨てたり唾を吐いたりしても、バレなければ罰せられることもないということなのです。無論たまたま警察官に見られたり、監視カメラの記録に残っていたりして捕まるというケースもあるかと思いますが、結局は個人のモラルによるところが大きいのではないかと思います。

最後に所得の件ですが、ご存知の通りシンガポールは一人当たりGDPで日本を抜き、アジアで最も豊かな国となりました。そのため、シンガポールで生活を始めた頃は道行く人々が全員金持ちのような錯覚を覚えたものですが、同時にある疑問も 覚えました。例えばホーカー(大衆食堂)の飲食店の従業員を見て、あるいは道端で工事を行っている土木作業員を見て、果たして彼らの年収は日本にいた頃の自分より上なのだろうか?と。おそらく必ずしもそうではないと思います。

というのも、シンガポールは6世帯に1世帯が金融資産百万米ドル以上の富裕層と言われており、日本よりも格差が大きい社会です。つまり、莫大な富を有する高所得者層によって平均値が引き上げられているのであって、中間層で言えば日本とそれほど変わらないのではないかと思います。とはいえ日本は20年以上に及ぶ経済の停滞と金融緩和に伴う円安の影響で、相対的に世界における所得の地位が年々下がってきています。このままではシンガポールはおろか、成長を続ける東南アジア諸国に追いつかれるのも時間の問題と思われます。

まとめると、シンガポールは実際のところそこまで美しい国というわけでもないし、かといって罰則ばかりで窮屈で生きにくいというわけでもないということです。誰かが作ったキャッチフレーズやイメージに踊らされず、実情を自分の目で確かめてみることが大事なのではないでしょうか。

 

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シンガポールにおける銀行口座の作り方

今回はシンガポールで銀行口座を開設する方法について紹介したいと思います。

 

シンガポール内の主な銀行

  • DBS (Development Bank of Singapore)
  • OCBC (Oversea Chinese Banking Corporation)
  • UOB (United Overseas Bank)
  • POSB (Post Office Savings Bank)

シンガポールにおける主な銀行は上記の4つです。POSBは元は郵便局のような公的機関でしたが、今はDBSに買収されてグループ会社のような位置付けになっています。DBS, OCBC, UOBは3行共にBloombergの銀行ランキングのTop10に選ばれており、その収益性と健全性が評価されています。

参考記事:米ブルームバーグも認める、シンガポールの金融力

 

基本的にこの3行はATMの数やサービス内容にそれほど差はないので、自宅や会社の近くにある銀行を選ぶと良いのではないかと思います。筆者はDBSとOCBCに口座を作りました。

 

口座開設に必要なもの

  • Passport
  • EP/DP (IPA)
  • Tenancy Agreement (Certificate of residence)
  • Certificate of Stamp Duty
  • Deposit (1,000~5000SGD)

基本的に口座開設に必要なものは上記の通りですが、銀行によって変わる場合があります。例えばDBSではPassport, IPA of EP, Tenancy Agreementのみで口座を作ることができましたが、OCBCではIPAは受理されず、本物のEPとCertificate of Stamp Duty(印紙税支払いの証明)の提出を求められました。いずれにしても、現在では口座開設時に住所の証明(Tenancy Agreement等)を求められることに注意が必要です。これはすなわち、シンガポール居住者以外は口座を開くことができないということです。以前はシンガポールに住所を持たない人でも口座開設が可能だったようですが、2015年頃に方針が変更されたようです。最近は就労ビザ発行の要件も厳しくなっており、政府が外国人就労者数の抑制に乗り出していることにも関係があるかもしれません。

 

ちなみに、シンガポール国内にもいくつか支店を持つCitibankであれば、住所を持たない人でも口座を開くことができるようです。ただし、CitibankはDepositが 5,000SGDと、他の銀行に比べて高めに設定されているようです。Depositは最低預金金額のようなもので、預金残高がこの金額を下回ると、毎月一定の口座維持手数料を取られることになります。

 

シンガポールで働く上では、銀行口座の開設は必須になるかと思います。次回は開設後の口座の活用方法について紹介したいと思います。

 

血債の塔

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シンガポールの戦争記念公園に、血債の塔と呼ばれる塔が建っています。第二次世界大戦中、日本軍に虐殺されたシンガポールの人々を追悼するために建てられた慰霊碑です。正式名称はMemorial to the Civilian Victims of the Japanese Occupation(日本占領時期死難人民記念碑)と呼ばれ、四本の塔はそれぞれ華人、インド人、マレー人、ユーラシア人を表しているそうです。

シンガポールにこのような塔が建っていることを知ったのは、子どもの頃に戦争の漫画を読んだ時でした。外国というものの存在すら知らなかった自分にとって、 かつて日本が世界中を相手に戦い、殺し殺され、壊滅し敗北したという事実は衝撃的でした。現代の平和なシンガポールに住んでいると、かつてこの地に日本軍が侵攻し、暴虐の限りを尽くしたという歴史を忘れそうになります。実際、若い人の中には知らない人もいるかもしれません。しかし、このような悲劇を二度と繰り返さないためにも、かつてこの地で戦争があったという事実は心の片隅に留めておくべきでしょう。

日本人観光客がほとんど訪れないその場所は、Raffles Hotelのほど近くにあります。